平成22年度事業の「報告書」について

報告書要旨

我が国は、世界に例を見ないスピードで高齢化が進行している。65歳以上の高齢者人口は、1950年には総人口の5%に満たなかったが、1970年に7%を超え、1994年には14%を超えた。そして、今、23%を超えまさに「超高齢社会」となっている。今後、総人口が減少するなかで、高齢化率は上昇を続け、2015年には26%、2055年には40.5%に達し、2.5人に1人が65歳以上となることが予測されている。


国と同様に、神奈川県においても急速に高齢化が進展しており、要介護高齢者も増加し続けている。こうした背景のなかで、前々から地域における介護・医療システムのあり方が問われていた。また、介護現場においては、人材を取り巻く様々な課題がクローズアップされており、良質な介護サービスの充実に向けた取り組みが求められている。


このような背景から、介護分野の課題解決に向けて、ロボット関連技術などの先端技術を活かす試みが重要な課題となっていた。そこで、「ロボット導入が介護分野の課題解決になるのでは?」との仮説を検証するために神奈川県が取り組んだのが「介護・医療分野ロボット普及推進事業」である。


当事業では、2つの取り組みを中心に実施した。その1つは、計4機種の介護ロボットを県内の7施設に3ヶ月間試験的に導入し評価をするための「介護ロボットの試験導入」である。この取り組みでは、介護者・被介護者のロボット使用の主観や有効性、それに介護業務の負担軽減などの評価を行った。この取り組みにより、ロボットを効果的に利用するためには、「単に導入するだけ」ではなく、ロボット利用の方法や効果的な介護者の関わりなど「誰に対してどのように使うか」の運用技術が重要であることが明確になった。


もう1つの取り組みは、介護スタッフのロボットに対する意識調査を行う「介護施設のニーズ調査」であった。アンケート調査票の作成・送付・回収を行い、続いてその中から訪問の許可をもらった施設を対象に訪問ヒアリング調査を実施した。この調査により、介護スタッフには介護分野における有効なロボットに関する情報がまだまだ十分に伝わっていないことが判明した。この「ロボットに関する情報」とは、「介護ロボットとは何か?」という定義面だけではなく、導入後の機能面のメリット、費用対効果、安全性の保証などが含まれており、これら全ての認知不足は、介護ロボット導入に向けての阻害要因となると考えられる。一方で、正しい情報の提供と認識の向上により、今後、より導入が進む可能性が高いことが判明した。


また、これら事業の核となる2つの取り組みとそこから導き出された結果を総合的に勘案し、介護ロボット普及に向けた方策も検討した。その結果、早急に行わなければならないアクションとして、「介護ロボット導入で効果を上げるための、被介護者選定や評価指標に関するガイドライン」、「介護ロボットの機能を十分に引き出すための教育・研修ツールの作成や、ノウハウを獲得した人材の育成」などを実現することが提起された。このような取り組みに牽引され、ロボットメーカーや介護分野の関係者などによる意見交換による「介護ロボットの新たな有効な技術導入」が実現され、さらに介護施設に対するPR活動などを通じた介護ロボットの普及啓発も進むことが確認された。


当事業は、わずか5カ月間に計19回もメディアに取り上げられ、その点でもロボットの普及・啓発に大きく貢献したと考えられる。国の重点施策であり、しかも、日本における高齢化率の高まりも影響して、マスメディアも大きく注目しており、今後とも時代の潮流を追い風に、正しく効果的な介護ロボット利用・普及の道標を提起していくことがミッションと考えている。


今後は、当事業の結果を踏まえ、具体的に介護現場に介護ロボットなどの先端技術を導入するための基盤や施策の整備を行うと共に、介護ロボットのマーケティングを強化した啓発活動の実施、すでに商品化された介護ロボットの現場での安全性や有効性の検証など、多角的な事業展開が必要と考えられる。

平成22年度事業の「報告書」

「表紙」~「第Ⅰ部 本編」

「表紙」~「第Ⅰ部 本編」

「表紙」~「第Ⅰ部 本編」(5.1MB)

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Ⅰ.
実施概要

1. 背景
2. 目的
3. 実施事項の概要
  3.1 ロボットの試験導入
  3.2 介護施設のニーズ調査
  3.3 委員会の設置と開催 
  3.4 事業説明会
  3.5 介護ロボットの普及推進活動

4. 成果の目標
  4.1 ロボットの試験導入
  4.2 介護施設のニーズ調査

5. 実施スケジュール

Ⅱ.
実地体制

1. 運営体制

2. 委員会の設置

3. 作業部会(WG)の設置

Ⅲ.
介護ロボット試験導入の実施結果

1. 目的
2. 実施概要
  2.1 介護ロボットの領域
  2.2 介護ロボットの選定
 2.3 貸与先施設の選定と決定
 2.4 介護ロボット評価の概要

3. 介護ロボット別の評価の実施結果
  3.1 実施結果1:HAL
 3.2 実施結果2:パロ
 3.3 実施結果3:眠りSCAN
  3.4 実施結果4:り~だぶる

4. ロボット試験導入の総括
  4.1 ポイントはどのように使うか
  4.2 反省を踏まえて

Ⅳ.
介護施設のニーズ調査の実施結果
1. 目的
 2. 実施概要
  2.1 調査対象
  2.2 調査方法
  2.3 調査内容
  2.4 調査期間
  2.5 回収および訪問状況
 3. 実施結果
  3.1 アンケート調査(一次調査)の結果
  3.2 訪問ヒアリング調査(二次調査)の結果
 4. 介護施設のニーズ調査結果の総括
  4.1 錯綜する介護ロボットの解釈
  4.2 まずは積極層へのアクション
  4.3 情報不足のギャップを埋めるのが今後の課題
V.
普及・啓発に向けた取り組み

1. 特別イベントの開催
  1.1 事業説明会の開催
  1.2 シンポジウムの開催

2. メディアなどによる取材・視察および掲載実績
  2.1 民主党ライフ・イノベーション小委員会の視察
  2.2 カナフルTVの特別番組放映
  2.3 その他のメディア掲載実績
3. 普及・啓発に向けた取り組みの考察

VI.
課題を踏まえた5つの提言
1. 課題のまとめ
  1.1 「介護ロボット試験導入」にて明らかになった課題
  1.2 「介護施設のニーズ調査」にて明らかになった課題
 2. 5つの提言
  2.1 ロボットの評価(モニタリング)
  2.2 運用技術の開発
  2.3 人材育成
  2.4 ガイドラインの策定
  2.5 介護ロボット普及推進センター(仮称)の設置
 3. 提言の実現に向けて

第Ⅱ部 資料編

「第Ⅱ部 資料編」

「第Ⅱ部 資料編」(19.7MB)

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資料1 委員会の開催実績
資料2 介護ロボット一覧表
資料3

ロボットの試験導入に関する資料
  資料3.1 試験導入したロボットを施設に評価してもらうための「評価シート」
  資料3.2 ロボット評価のために利用した「評価シート」以外の書式

資料4

介護施設のニーズ調査に関する資料
  資料 4.1 アンケート調査票
  資料4.2 ヒアリング調査用のチェックシート

資料5 プレスリリース
資料6 メディア掲載記事
資料7

シンポジウム開催要項

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