平成23年度 介護ロボット事業の取組み

1.介護ロボットの試験導入と評価

「介護ロボットの試験導入と評価」は、22年度事業に引き続き実施しました。既に市場に導入されているロボットを対象に、介護分野の課題解決が可能かどうかを確認することを目的に、次の3つの側面から試験導入および評価を行いました。

介護する側(介護スタッフ)の問題解

例:介護の負担軽減、人手不足の解消

介護される側(施設の利用者)の問題解

例:自立・身体動作の支援

施設全体へのインパクト

例:施設全体に与える効果(インパクト)
上記3つの側面から評価するためにロボットの機種別に「評価シート」を作成して、介護ロボットの有効性などに関するデータを収集しました。また、評価によって得られた定性的および定量的データを集計・分析し、これを報告書の記載内容としてまとめあげました。
なお、平成23年度事業では、神奈川県内の計17施設を対象に、計7機種の介護ロボットを試験導入しました。

2.介護ロボット導入促進のガイドライン策

介護ロボットの普及促進を目的に2タイプのガイドラインを策定しました。
1つは、機種に関係なく導入促進に向けて全ての介護ロボットに共通して利用することができる包括的な内容を盛り込むガイドラインを策定しました。また、機種毎にロボットの用途などが異なる事由から、特定の機種を対象に「機種別のガイドライン」を策定しました。

3.人材育成に向けた教育・研修

22年度事業の「ロボットの機能を効果的に引き出すためには、ロボットというハード(モノ)を提供するだけでは不十分であり、教育や研修などの提供を含めたソフト面の充実が不可欠である」との反省を踏まえ、23年度事業ではロボットの運用技術を習得した人材育成を目的に、新たな教育・研修の仕組み作りにチャレンジしました。
新たな仕組み作りにチャレンジすると同時に、ロボットの導入時における既存の教育・研修制度に関する課題を整理してまとめ上げました。

4.介護施設経営者などへのヒアリング調査

22年度事業の延長として、介護施設の経営層を対象に対面ヒアリングを実施しました。目的は大きく2つありました。
1つは、介護ロボットの普及促進に向けてロボット導入の支援拠点となりうる介護施設を開拓すること。もう1つは、介護ロボットの普及促進に向けて取り組むべきアクションに関し、介護施設側の視点をフィードバックしてもらうことでした。

5.介護ロボットの普及推進活動

介護ロボットを世間一般の方々に広く知ってもらうことを目的に低予算で様々な活動を行いました。普及推進の一手段として、22年度にホームページを立ち上げましたが、23年度事業では「介護ロボット」という単語で主要検索エンジンのトップ表示を目指しアクセス数を増やしました。また、シンポジウムなどのイベント開催を積極的に行い情報発信をしていくと同時に国内外からの注目を集めることで普及推進を図りました。

平成23年度事業の「報告書」について

報告書要旨

超高齢社会に突入した我が国だが、神奈川県においても急速に高齢化が進展しており、介護分野の様々な課題がクローズアップされていた。また、バブルの崩壊、リーマン・ショックなどの影響があり低迷し続ける地域経済への打開策が議論されてきた。
そこで、「介護分野の課題解決」および「新産業の育成」という2つの目的を掲げ、平成22年度に引き続き神奈川県から受託して実施したのが「介護・医療分野ロボット普及推進モデル事業(以下、“介護ロボット普及モデル事業”)」である。
22年度事業と同様に、23年度事業では「介護ロボットの試験導入と評価」、「介護施設経営者などへのヒアリング調査」、それに「介護ロボットの普及推進活動」と大きく3つの取り組みを中心に実施した。「介護ロボットの試験導入と評価」では、対象範囲を広げて計7機種の介護ロボットを県内の17施設に2~5ヵ月間試験的に導入・評価した。「介護施設経営者などへのヒアリング調査」では、主に介護ロボットの導入支援拠点の開拓を目的に、ヒアリング対象を介護スタッフから経営層へシフトして実施した。
また、22年度事業との大きな違いとしては、「介護ロボット導入促進のガイドライン策定」および「人材育成に向けた教育・研修」を新たに実施したことである。介護ロボットを普及させるためには、導入、評価、運用、教育など様々な取り組みを進めていく必要があるが、こうした取り組みに役立てる目的でガイドラインを策定した。「人材教育に向けた教育・研修」ではロボットの運用技術を身に付けた人材の育成を目的にチャレンジした。
22年度から始めた当事業は、当初に掲げた2つの目的を達成したと言うまでには至らなかった。しかし、大阪府議会、ノルウェー国会などの視察受け入れを含め、国内外から大きく注目され、その他にもロボットを研究している大学生や介護ロボット市場への参入を検討している民間企業からの相談にも数多く対応した。これら1つ1つの活動がロボットの普及・啓発に大きく貢献したと考えている。世界でも経験したことのない超高齢社会に突入していくにあたり、日本の産業構造が変わっていくための基盤作りに大きく貢献したと言えるだろう。
今後は、神奈川県の「介護ロボット普及推進センター」構想の実現に向けて、民間企業、介護施設、および関係団体など産官学が連携して多角的なアクションを起こすことが必要であると考えている。介護の問題を解決し、ロボット技術を活用した新産業を育成していくためには、関係者の知恵を重ね合わせ、チャレンジする必要がある。この取り組みが神奈川、そして日本だけではなく世界の未来を明るくすると信じている。 

平成23年度事業の「報告書」

「表紙」~「第Ⅰ部 本編」

「表紙」~「第Ⅰ部 本編」

「表紙」~「第Ⅰ部 本編」(8.4MB)

PDFファイルをご覧になるには、Adobe® Reader®が必要です

Ⅰ.
実施概要
1. 介護ロボット普及モデル事業の意義と目的
1.1 背景と平成22年度事業の取り組み
1.2 当事業が対象とする「介護ロボット」
1.3 これまでの反省と課題
2. 23年度事業の実施概要と成果目標
2.1 介護ロボットの試験導入と評価
2.2 介護ロボット導入促進のガイドライン策定
2.3 人材育成に向けた教育・研修
2.4 介護施設経営者などへのヒアリング調査
2.5 介護ロボットの普及推進活動
3. 実施体制とスケジュール
3.1 委員会設置
3.2 分科会の運営
3.3 スケジュール
Ⅱ.
介護ロボットの試験導入と評価
1. 目的
2. 実施概要
2.1 介護ロボットの選定
2.2 試験導入先の選定と決定
2.3 介護ロボット評価の概要
3. 介護ロボット別の評価の実施結果
3.1 実施結果1:HAL
3.2 実施結果2:パロ
3.3 実施結果3:眠りSCAN
3.4 実施結果4:つるべー
3.5 実施結果5:リラウェーブ
3.6 実施結果6:ヒューマニー
3.7 実施結果7:パワーアシストハンド
4. 介護ロボットの試験導入および評価のまとめ
4.1 試験導入および評価のまとめ
4.2 今後の課題
Ⅲ.
介護ロボット導入促進のガイドライン策定
1. 策定する背景と目的
2. 介護ロボット活用のガイドライン(導入編)の概要
3. 機種別のガイドライン
3.1 HALガイドラインの概要
3.2 パロガイドラインの概要
3.3 眠りSCANガイドラインの概要
Ⅳ.
人材育成に向けた教育・研修
1. 人材育成の背景
2. 導入教育・研修の実施概要
2.1 HALの導入教育・研修
2.2 パロの導入教育・研修
2.3 眠りSCANの導入教育・研修
3. 教育・研修の課題
3.1 HALの教育・研修の課題
3.2 パロの教育・研修の課題
3.3 眠りSCANの教育・研修の課題
4. 人材育成に向けた教育・研修の「まとめと今後の課題」
V.
介護施設経営者などへのヒアリング調
1. 目的
2. 実施概要
2.1 調査方法
2.2 調査対象施設の抽出方法と対象者
2.3 調査実施時期
2.4 調査内容(インタビュー項目)
3. 調査結果の概要
3.1 施設経営上の重要課題
3.2 介護ロボットの認識と関心度
3.3 介護ロボットの導入実績と今後の導入意向、 および課題認
3.4 介護ロボット普及に向けた対応策
3.5 普及の拠点となるモデル施設の可能性
4. 調査結果の統括と提言
4.1 調査結果の統括
4.2 今後の普及推進に向けての課題
4.3 介護ロボット普及推進のためのアクション(案)
VI.
介護ロボットの普及推進活動
1. イベントの開催・参加
1.1 「事業説明会」の開催
1.2 2011国際ロボット展の参加
1.3 「デジタルヘルスの未来2012」の講演
1.4 「かながわ未来フォーラム」の開催
2. メディア取材・掲載実績および視察の受け入れ
2.1 メディア取材・掲載の実績
2.2 大阪府議会の視察
2.3 ノルウェー国会の視察
2.4 その他、視察の受け入れ対応
2.5 普及・推進に向けた取り組みの考察
Ⅶ.
次なるステップに向けて
1. 介護ロボットの普及に向けた課題のまとめ
2. 次なるステップに向けて

第Ⅱ部 資料編

「第Ⅱ部 資料編」

「第Ⅱ部 資料編」(19.7MB)

PDFファイルをご覧になるには、Adobe® Reader®が必要です

1 委員会の開催実績
2 介護ロボット一覧表
3 介護ロボットの試験導入と評価に関する資料
4 介護施設経営のモニター調査に関する資料
5 機種別・利用者別の個別事例集
6 プレスリリース
7 メディア掲載記事

ページトップ